古代の美術品 2
ミケネ作家はよくこの姿態をあらわします。
この細長い画面をよく活気のある場面でみたしています。
逃げる獅子が刀身の端を埋め、立向う獅子と狩人たちは画面の中心をなして、それぞれの姿によって劇的な場景をつくりだすのです。
ところで、象嵌はオリエントからクレタに伝わっていますが、ミケネ時代に最も発達してその特技といえるでしょう。
その制作には青銅の刀身に象嵌した金属板をはめこんだのか、それとも金属板をはめてから象嵌をしたのか、説はわかれています。
・・・ともあれ、象嵌の地金はいぶし銀(酸化された銀)であって、それに金、銀、銅、ニエロ、エレクトロンなどによって図柄を象嵌し、細部は線刻したと推定できます。
簡単な象嵌刀では黄金だけに連渦文を連ねたり、ユリの花を散らしたりします。
情景をあらわしては、パピルスが茂るナイル河畔に猫に狙われて飛びたつ鳥を描いたり、5頭の鹿とそれを追う一頭の獅子を絵にしています。
象嵌は金属によって描かれた絵。
次にミケネ以外の例をあげましょう。
「象嵌のある短剣」(長さ25センチ、ピュロス出土、前16世紀)。
いったいに刀身の象嵌部分は先端ほど細くなる異常に長い面ですから、情景の絵では走る動物とか狩の場面がふさわしく、構図はすべての人や動物が一方向にだけ向いて画面が傾いたり分解しないように、図像の一つは逆の方向を向くようにします。
ここに掲げたものはそんな通例をはなれて成功しています。
まず画題は海生動物。
5個のタコ舟を適当に配置してその間にサンゴや海藻をまじえています。
この貝は同じ方向をむくけれども、金と銀とを交互におき、サンゴの枝は銀だから変化があり、貝は気付かぬほどに巧みに剣の先端ほど小さくなっていきます。